Twelfth Night

大学時代のサークルの看板を撮影しろと先輩に言われていた。

この看板、僕が大学1年の夏に、それまで紙の張りぼてだった看板を作り直したものだ。
家にあった杉の端材を自分で焼杉にして、家にあったエナメル塗料で手書きした。

サークルはだいぶ前に廃部になっていて、看板の行方もしばらく不明だったのを、探し出してくれた。
そして、顧問だった教授の遺稿集に写真を掲載したいからと撮影を頼まれ、35年ぶりに再会した。

僕にとって「シェイクスピア劇研究会」の印象は「十二夜 ─Twelfth Night─」とイコールだった。
最初の舞台でもあったし、シェイクスピアの戯曲の中で一番好きだったし、何本もの芝居を演ったけれど、あの「十二夜」のみんなが最も生き生きと個性的だったと今でも思っている。
「十二夜」は、双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が嵐に遭い、それぞれが別々に海岸に打ち上げられたことがストーリーの発端となる。

だから、先輩のオーダーは「英国田舎風田園グリーンバックで」だったのだけれど、僕はどうしても海を背景に撮りたかった。

「イギリス・ドーバー海峡の青い海をバックに、シェイクスピア生誕の地であるストラトフォード・アポン・エイボンの田園風景を彷彿させる草原とそこに咲く可憐な白い小花」(先輩評)…が上の写真。
「十二夜」の難破船から海岸に打ち上げられた双子の妹ヴァイオラをイメージして…が下の写真。

気に入ってもらえて、とても嬉しい。
気持ちが伝わって、すごく良かった。
撮影地は、英国でもなんでもなく、山形県の日本海側、温海付近なんだけどね(笑)

撮影が終わった看板は、僕の手元にずっと置かせてもらう。
大声で叫びたいほど青春だった時代が刻まれた銘版である。

#DP3M