停まった時間を刻んでいる
真夏にはまだ遠いある日の午後。
暖簾を分けて店に入ると
そこだけが時が停まっているようだった。
薄暗い空間に四角く切られた二つの額からは
主の妻が手入れしたのだろうか
ささやかな庭にあふれる緑が輝いて見えた。
棚の上に置かれた小さなテレビは
場違いに思える大リーグの試合を
ミュートのまま映し出している。
ふと横に掛けられた古い柱時計に
目をやると祝新築の金文字。
いつからこの時計はこの店の新しい門出を
祝い続けているのか
そう考えると可笑しな気がした。
いつからこの時計は停まった時間を
刻み続けてきたのだろうか。
明日を急がない営みが少しの
湿度を伴って心地よく僕を包んだ。