すっぽこ通信「素仁庵すっぽこ試食会」2012年12月26日号

至福の時間でした。

赤ちゃんを作ってから産まれちゃうぐらいの、
ほぼ十月十日(とつきとおか)ぶりに、こんにちは。
すっぽこ所長でございます。

そうなのだ。産まれちゃったのだ。
新作すっぽこ。
衰退・滅亡の一途を辿っているすっぽこが、
お店に新たにお目見えするのは、戦後初…いや、
すっぽこ史上初の出来事であるに違いない。

ことの発端はfacebook。
山形市の老舗料亭「千歳館」が併設する「素仁庵」に飲みに行き、
澤渡章専務に初めてご挨拶をさせていただいてすぐに、
facebook上でも友達としてリンク。
無謀にも、唐突に「すっぽこ、作ってもらえません?」と、
澤渡さんのウォールに公開メッセージを書き込んだら、あらま。
「よっしゃ!」と快諾していただいたのだった。

実は、これにはさらに発端がある。
この20日ほど前、未食だった「志っぽこ(すっぽこ)」調査のため、
I氏と待ち合わせて某店におじゃました。
その際、少なくなる一方のすっぽこ店の現況を嘆き、
「どこかで新しくメニューに加えてもらいたいんだよね」と話したところ、
I氏の口から「澤渡さんとことかどうなんだろう」と。

いいねっ!いいねっ!
(facebookのそれではなく、横山剣風に)

そして、いてもたっていられなく、
澤渡さんにメッセージしたのだった。

簡単に「すっぽこ」の定義(一般的なレシピ)を伝え、
小さい頃に食べたことがあるという澤渡さんの記憶と、
千歳館・素仁庵の看板にふさわしいスタイル、それぞれを融合させた、
新しいすっぽこ作ってみよう…てな具合にトントン拍子、
メニュー化に向けての「すっぽこ試食会」開催となった。


(島貫さん、写真お借りしました)

2012年12月26日。
大げさではなく、この日をぼくは忘れないと思う。

集まったメンバーは、先述した澤渡さんへの公開メッセージを見て、
「食べたい!参加したい!」とコメントをくれた方々。
これに、どうしても「すっぽこ」に欠かせない数名を加えた。
 
 
19時、素仁庵を訪ねると、
厨房ですっぽこづくりに真摯に立ち向かう澤渡さん。
その(全然真摯に見えない)お姿がこれ。


うどんは、既存店の玉うどんとは違い、
山形伝統の「ひっぱり(ひきずり)うどん」用の細目の麺を使用。

具は、椎茸、板かま、鶏肉、ネギ、セリなどの、
すっぽこ定番のものに、エビ、だし巻き卵をトッピング。
さらに、煮穴子が加えられ、豪華さと食べる楽しさが一段と増している。

既存店に比べ、餡はかなりゆるめであっさり。
そのかわり、出しを強く効かせたまさに料亭すっぽこ。
単なるお遊びではなく、店に出すメニュー開発を目指した、
これぞ、千歳館・素仁庵にふさわしい澤渡さん流の、
新すっぽこなのだった。



かつては、山形市内の多くの蕎麦屋で供していたすっぽこが、
次々とメニューから姿を消していった理由の一つは、
作るのに手間がかかる、忙しい昼時に対応できない…である。
澤渡さんも、実際に作ってみて同様のことを話していた。
 
近江商人を祖に持つ商家の旦那衆が好んで食べたであろうすっぽこは、
普段の生活においては異質の「ハレ」の食であり、
高級素材に手間暇をかけたご馳走なのだ。
改めて、今もメニューに掲げている4店に頭が下がる想い。

ぜひ、多くの人に「すっぽこ」を知ってほしい、食べてみてほしい。
現在も食べられる4店は以下。いずれも山形市内。

・品川家
・寿屋本店
・羽前屋
・栄屋本店

そして!
千歳館・素仁庵でも、メニュー化決定!
年明け1月からメニューに載ることになった。
ただし、要予約となるとのこと。

すっぽこに出会い、調べれば調べるほど、
山形市の歴史と文化が盛り合わされたソウルフードであることを知り、
どんどん食べられるお店が減っていく現状をマジ憂いていた。

ほんの少しだけ早い初夢がかなった。
澤渡専務!その男気、料理人の心意気に心から感謝します。
 
 
■山形美味いもの研究所「素仁庵(そにあん)」 http://bit.ly/V4XMLH