ビフォーアフターアフター:玄関


■ビフォー:解体前の七日町の2つの玄関

七日町の家には、正玄関といわゆる勝手口の2つの出入口があった。正玄関はお客様用で、家人はほとんど物置を兼ねた勝手口を使っていた。正玄関と玄関ホールをつぶして義母の居住スペース増に充て、勝手口を正玄関にしたらどうだろう…七日町リフォームの(大げさに言えば)プロジェクトは、この思い付きが起点。
このアイデアが出てこなかったら、リフォームを考えることも瀬野さんに相談することもなかっただろうなぁ。

勝手口スペースは、北西角の階段室・トイレも含めると東端から西端まで奥行き3間半、幅1間あり、奥へ伸びる細長い土間空間は、「京町屋みたいだ」と以前から密かに思っていた。


■アフター(素撮り):七日町リフォーム、オープンハウス時(引き渡し直前)

瀬野さんは、そもそも「土間」が大好きだ(笑)
よって、新玄関プランも元の物置兼勝手口のスペースが、土間のまままるごと活かされた。クローズドだった階段室はオープンにされて開放感がさら増し、一番奥の西壁面には義父が遺した蔵書も合わせて収納できる本棚が、玄関床面から2階天井まで覆っていた。プラン初見で感動した。

北側はスリット状のハンドル開閉式の窓が切られ、隣家とのプライバシーを確保しつつ、十分な採光と風取り機能を果たす。
階段手前、左側に見える開口部(引戸)が、義母の「離れ」である。



■アフターアフター:引っ越し約1カ月後の暮らしぶり。

町屋風玄関土間ホールの全貌が上の写真。

収納力たっぷりの下駄箱、自転車3台、さらにバイクが1台納まり、多少の窮屈さは奥行きによって開放感を十分に補われている。なによりも、玄関引戸から上がり框までのアプローチの長さが、路地のような、戸外と屋内の中間的あいまさを作っていて、毎日の出入りが楽しいのです。

上がり框から2・3階の「母屋」に続く階段と本棚を見上げたのが、下の写真。

町屋なら土間通路が裏庭に抜けるが、七日町町屋は上に向かう(笑)
動線は短く効率が良ければいいというものではなく、回り道もまた楽し。玄関を入ってから、土間を通り、階段を上り切るまでの距離、時間、プロセスが帰宅した安堵感、というか楽しさを増幅してくれる。かっこよく言い過ぎてる?でもホントなの。
七日町を一度でも訪ねて来てくれた人なら実感として分かってもらえるはず。

ただ、義母が靴を脱ぎ履きするときの支えになる手摺りがない。本人はもちろん、奥さんも僕もそこまで思い至らなかったのと、その手の提案が実は今回の設計チームは苦手なのかも(笑)そこで、今、上がり框のところに追加造作を依頼していて、デザイン&見積もりの真っ最中ですのだ。

設計監理:瀬野和広 + 設計アトリエ
設計共同:金内勝彦設計工房
施工:ますかわホーム(升川建設株式会社 ハウス事業部)

建築写真撮影:長岡信也(←施主 笑)

ビフォーアフターアフター:茶の間
ビフォーアフターアフター:階段
ビフォーアフターアフター:階段2